“気になる女の子(1)”の続き。

連作ですので、前回のエッセイをまだ読まれていない方は、

を、ぜひぜひお読みくださいませ!

さて。

近所のホームセンターに入っているペットショップで、生後3ヵ月のチンチラシルバーの雌ネコに出会った……というところまで書いた。今回はその続きであります。

子ネコのぬくもりが残った両手をズボンのポケットにねじ込んで、俺は静かにペットショップを後にした。盛大に喉をゴロゴロと鳴らしながら目をつむり、疑うことなく俺の手に身をゆだねてきたその子は、本当にあり得ないくらいかわいかった。毛の質感が、分厚いダブルコートを備えたノルウェージャンフォレストキャットのるーさんと違い、綿菓子のようにフワフワで、その体温がダイレクトにこちらに伝わってくる。

あまりにも頼りなく、あまりにも儚い毛のカタマリ……。

チンチラシルバーの女の子から受けた、漠然とした第一印象。あまりにもかわいいので、その場ですぐに、

「この子、くだちゃい!!!!」

と言いたくなってしまったが、なかなかそうもいかない事情もあったのだ。

もっとも大きな理由は、家にはすでに、るーさんがいたこと。

▲ズズン!

先代ニャンコのミュウ&アクアのように、2頭飼い時の多幸感は筆舌に尽くしがたいものがあったが、それはたまたま2匹の相性が良かっただけであって、今回もそうなるとは限らない。もっとも幸せにしてあげなければいけないるーさんが、相性の悪い子が来てしまったがためにストレスを感じたりしたら……。もう、考えただけで涙が出そうになる。

もうひとつ、これは前回のエッセイの最後に書いたが、もしも2匹目を迎えるとしても、そのときは里親会や保護ネコから選択させてもらおう……と決めていたからだ。ペットショップに並んでいる子は器量よしばかりだし、わざわざ高いお金を出して俺が買わなくても誰かが引き取ってくれるだろう。だったら、不幸になってしまう可能性がある子の中から……と考えていたのである。

なので、抱っこはさせてもらったけど、この段階でチンチラシルバーの女の子を引き取るつもりは“0パーセント”だった。

「あの子は抜群にルックスがいいから、すぐに売れていくだろうな」

と、確信もしていたし。俺は意識して、その子のことを頭から締め出そうとした。

(早く売れちゃえよ!)

と考えながら--。

それから、アッと言う間に1ヵ月の時が流れた。

このころになると再び、るーさんグッズ(おやつとかネコ砂とかねw)のストックが怪しくなってきたため、俺は例のホームセンターに足を運んだ。店に向かう道すがら、ふいに頭をよぎったのは、意識から締め出したはずのチンチラシルバーの女の子である。でもそれは“また会いたい”というよりも、

「とっくに売れてしまって、いなくなっているんだろうなあ」

という希望的観測のほうが強かったと思う。くどいようだが、ウチで引き取るわけにはいかないと考えていたから。

そんな思いとは裏腹に、俺はホームセンターに着くや否や、ペットショップのケージににじり寄った。1匹1匹、そこにいる犬猫を確認しながら、頭の中では、

(チンチラ……! チンチラの……女の子……!)

と、1ヵ月前に抱っこさせてもらったニャンコのことしか考えていなかった。

売れていてほしいけど……でもできればもう一度、この目に焼き付けておきたい……!

心の奥底で、そんな思いがくすぶり続けていた。「ひと目惚れじゃん!!」と突っ込まれるかもしれないが、ネコ好きなんて、こんなものなんじゃないかと思う。



そして--。

チンチラシルバーの女の子は、1ヵ月前と同じように、ケージの中で熟睡していた。……いや、“同じように”ではないな。子ネコにとっての1ヵ月という時間は、精神と時の部屋に入った孫悟飯もかくや……ってくらい成長を促すもので、かつての小さな姿は見る影もない。つまり、すっかり大きくなっていたのだ。

「あ……。あの子、まだいたのか……。もう、かなり大きいのにな……」

1ヵ月前に微かに感じた不安が、本格的に頭をもたげてきた。1ヵ月前に生後3ヵ月だったから……おいおい、もう4ヵ月ではないか。るーさんなんて、生後2ヵ月でウチに来たのに。

その日、俺はチンチラシルバーの女の子を一瞥しただけで、店を後にしてしまった。そして帰宅してから、

「あ!! 目的だったるーさんグッズ、買ってこなかった!!!」

と、自分が心ここにあらずの状態だったことに気づかされたのでありました。

▲なに忘れてんねん!

その日から、つねに俺は心のどこかで、チンチラシルバーの女の子のことを考えるようになった。

あのまま売れ残る……なんてことはないよな? でも、すでにけっこう大きくなっちゃっていたし……。それなのに、値段は高いままだし……! 売る気あるのかよ!! 早くなんとかしてくれよ!!

なんてね。

それから、さらに2ヵ月--。

いつの間にか季節が夏に代わり、連日の猛暑にヒーヒーとあえいでいたとき、俺は何気なく、例のペットショップのホームページを見てしまった。

……いや、じつは2ヵ月前から毎日、「今日は……売れただろう!」と言いながら、チンチラシルバーの女の子の動向を追っていたんだけど。

しかし、俺の想いもむなしく、その日もチンチラシルバーの女の子は販売リストに入っていた。……が、売られている店がウチの近所のホームセンターではなく、近県のソレに変更されていたんだけど。

俺は焦った。

売れないから、他のチェーン店に飛ばされたのかな……。でも、売れるのかな。大丈夫かな……。

じつはもう、この段階で、俺の腹は決まっていたのかもしれない。

俺はスマホを取り出すと、ホームページに載っていたそのショップに、以下のようなメールを送った。

「以前、チンチラシルバーの女の子を抱っこさせていただいた者です。いまは他店に行ってしまったようですが、よければもう一度、抱かせてくれませんか?

……次回に続く。

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